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(六) YHVH 神の祖像 [神聖の系譜]


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『神聖の系譜』
メソポタミア〔シュメール〕
ヘブライ&日本の古代史
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦 
 
第二部 メソポタミアとイブル〔ヘブライ〕
 第二章 イブル〔ヘブライ〕の神「主」の神格
  
  (六) YHVH 神の祖像
    〔メソポタミアの物語との関係〕
       
  アトラ・ハシース物語は
 「アブラ(ハ)ム」名を解釈した
 第一章(二)の(4)概略紹介した。
 
 ここではより詳しく紹介したい。
 
 ジャン・ボッテロ著の『バビロ二ア』の
 解説からまず引用する。
 
 なお「アトラ・ハシース」の語義を同書は
 「最高の賢者」と記している。
 
 この物語の
 
 「書かれたのは恐らく紀元前一八世紀頃で
  一二〇〇行などの詩が
  三枚の粘土板に分けられていた」といい、
 
 シュメール時代の後のバビロニア時代に
 楔形文字で語られていたという神話である。
 
  人間が出現する前
  存在した神々だけだと考えられていた。
 
  神々の姿や神々が住む社会は人間を
  モデルに想像された。
  
  我々と同じように
  神々にも様々な欲求がある。
 
  食べること、着ること、住まうこと……。
 
  これらの欲求を満たすため、
  神々は辛い労働を余儀なくされていた。
  
  神々の社会も人間社会と同じように
  上下二つの階級に分かれていた。
 
  上位の神々は
  下位の神々を働かるだけでよいが、
  下位の神々は汗水流して
  必需品や贅沢品を
  つくり出さなければならない。
  
  とうとう彼等は
  これらの苦役に嫌気がさした。
 
  さらに上位の神々と同等に
  扱わないことを不当に
  感じるようにもなった。
 
  そこで彼らは文字通りストライキに入り
  口々に抗議の声をあげながら、
  神々の王エンリルに突きつけた。
  
  こうして大混乱が巻き起こり、
  神々の将来は暗く閉ざされたのである。
 
  このとき神々の中で最も賢く知恵のある
  神エンキ(エアとも呼ばれる)が
  妙案を出した。
 
  神々の身代わりをつくって
  その者に働かせればよい。
 
  将来その者が
  神々と同等に扱わないなどと
  言い出さぬように粘土でつくり、
  やがては「粘土に還る」
  つまり死ぬことを運命づけておく。
 
  ただし、
  それまで神々が行っていた仕事は
  効率よく続けられなければならないから、
  下位の神を一人殺して、
  それから採った血を
  その者の体に入れ
  労働のための知力と体力を授けてやろう。
 
  この案は
  神々の全体会議で満場一致で可決され、
  ここに人間が誕生した。
 
  従って
  人間は初めから神々の食物や使用物に
  作り変える義務を負っていたのである。
 
  人間は創造されると
  直ちに仕事に取り掛かり、
  目覚ましい成功を収めた。
 
 この最高の知恵者たるエンキ神こそ
 メソポタミアの当該神話は勿論、
 イブル人たちの神にして「主」であり、
 人々を導く YHVH神の祖像である。
 
  「エンキ」の語源はシュメール語の
 en-ki〔主-地〕で地神ではあるが、
 本書第一章(五)ですでに述べた
 「地下水の神」でもある。
 
 しかしながら、同神は人々を導く。
 
 その神性は「大洪水」の際、
 最も発揮され、明白である。
 
 上記の当該「洪水伝説と祝祭」で
 記したように大洪水の物語は
 『旧約聖書』を含め
 三伝承あることが知られている。
 
 そのうちの
 「ギルガメシュ叙事詩」のものは
 アトラ・ハーシス物語中にあるものである。
 
 前述の書「バビロニア」は
 その物語を以下のように要約している。
 
 前記引用文の続きである。
 
 
  (人間は)勿論不死ではなかったが、
  まだ病気も災害も知らなかったので、
 
  寿命は極めて長かった。
 
  彼等は繁栄し、子孫は地上に満ち溢れた。
  
  その喧騒がエンリルの眠りを妨げた。
 
  どうやらエンリルは神々の王に相応しい
  知力を持っていなかったらしく、
  人間の数を減らそうとして、
  そこに病気を持ち込んだ。
 
  それは人類を絶滅させる恐れのある
  伝染病だった。
 
  エンキは危険を感じ彼を崇拝している
  人間の王アトラ・ハーシスに
  どうしたら病気を回避できるか
  教えてやった。
 
  そこで再び人間は増殖し始め、
  その喧騒も高まった。
 
  エンリルは腹を立て、
  今度は日照りと飢饉を送って
  大量殺戮を企てた。
 
  だが、
  またしてもエンキが危険を遠ざけた。
 
  不眠に苛立っエンリルは
  人間を根絶やしにしてしまおうと決心した。
 
  〔そのため大洪水を
   起こそうとしたのである〕。
 
  これを知ったエンキは神々にとって
  不可欠な人間を守るため、
  せめてアトラ・ハーシスだけでも
  救い出そうとした。
  
  エンキはアトラ・ハーシスに
  大雨と増水の後にやってくる
  大洪水をどうしたら無事に
  生き延びられるかを教えてやった。
 
  方舟をつくり、
  その中に家族と動物を入れよ。
 
  そうすれば
  水に漂って全員を生き残ることができる。
 
 この場面はジャン・ボッテロによると
 ギルガメッシュ叙事詩の改訂版に
 みることができるという。
 
 つまり前者の粘土板に刻まれたものではない
 別の粘土板にその物語が
 楔形文字で記録されているということである。
 
 この改訂版においては
 「エンキ」名称ではなく「エア」が
 ギルガメッシュに対して
 語り(呼び)掛けるのである。
 
 前段で同神は神々の間において
 洪水を起こすことは
 人間どもに知らせてはならない
 との秘密を守るよう誓いを立てていたらしい。
 
 後段になってギルガメッシュは
 以下のような告白を行っている。
 
  エアは秘密を守る誓いを立てたにも
  かかわらず、
  彼らの言葉をわたしの葦屋に向って
  繰返した。
  
  「葦屋よ、おお柵よ、壁よ、壁よ、
   (中略)家を壊し、舟をつくれ。
 
   富を捨て、命を求めよ。
 
   財産のことは忘れて自らの命を助けよ。
 
   そして汝とともに
   すべての生き物の種子を舟に乗せよ。
 
   汝がつくる舟は
   間口と奥行を等しくせねばならぬ。」
 
   (中略)わたしはわが主エアにいった。
 
   「わが主よ、ただいまの命令を
    わたしは誠心誠意実行いたしましょう」
 
 この文脈における表現は実に重大である。
 
 「わが主エア」との表現、
  また
 「(主の)命令を実行いたしましょう」とある。
 
 
 また転記は省略するが、
 次節でギルガメッシュは「エア」に対して
 「下僕であるわたし」と述べる。
 
 つまりその状況は
 当第2章(四)YHVH名のイブル語解釈で説明した
 「主」の性格のほとんどが表現されており、
 YHVH神の祖像が「エア」神であり、
 さらには「エンキ」神だったとの経緯の
 証明になっている。
 
  確認のために『旧約聖書』「創世記」の
 「主」がノアに大洪水のための備えを
 呼び掛けている部分を載せる。
 〔ミルトス社版〕
 
   この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
   (中略)
   神はノアに言われた。
 
   「すべての肉なるものを終わらせる時が
    わたしの前にきている。
    彼らのゆえに不法が地に満ちている。
    見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。
    あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。
    箱舟には小部屋を幾つも造り、
    内側にも外側にもタールを塗りなさい。
    次のようにしてそれを造りなさい。
 
    箱舟の
    長さを三百アンマ、
    幅を五十アンマ、
    高さを三十アンマ、
    〔ミルトン社版は
     長さ一四十m
     幅二三m、
     高さ一四mとする〕にし、
 
    箱舟に明かりを取り造り、
    上から一アンマにして
    それを仕上げなさい。
    箱舟の側面には戸口を造りなさい。
    また一階と二階と三階を造りなさい。
    
    見よ。わたしは地上に洪水をもたらし、
    命の霊をもつすべて肉なるものを
    天の下から滅ぼす。
    地上のすべのものは息絶える。
    
    わたしはあなたと契約を立てる。
    あなたは妻子や娘たちと共に
    箱舟に入りなさい。
 
    またすべて命あるもの、
    すべて肉なるものから二つずつ
    箱舟に連れて入り、
    あなたと共に生き延びるようにしなさい。
    それらは雄と雌でなければならない。
    それぞれの鳥、それぞれの家畜、
    それぞれの地を這うものが二つずつ
    あなたのところへ来て
    生き延びるようにしなさい。
    更に食べる物はすべて
    あなたのところに集め、
    あなたと彼らの食糧としなさい。
    ノアは
    すべて神が命じられたとおり果たした。
 
    主はノアに言われた。
 
    「さあ、あなたとあなたの家族は
     皆箱舟に入りなさい。
     (中略)
     七日の後、
     わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、
     わたしが造ったすべての生き物を
     地の面からぬぐいさることにした」。
 
    ノアはすべて主が命じられたとおりにした。
     
  このノアの物語は、
 メソポタミアの粘土板に刻まれたジオスドラ、
 またギルガメッシュの叙事詩の内容により
 たいへん具体的にして詳細に亘っており、
 その記述の時期が上記二者を参考にしたと
 判断されるかなりの時代の
 後れたものであることを示している。
 
 しかし、そのものがたりの骨子は同じで、
 何らかの形で継承されてきたものである。
 ただし、前の二者の場合、
 神は複数登場してくるが、
 ノアの物語の場合は「主」のみで、
 そこに宗儀解釈上の変化をみる。
 
  さて、
 ここに至ってわれわれが認識できるのは
 『旧約聖書』の、
 つまりイブル人の神「主」の祖地が
 メソポタミアの古代にあったとの真実である。
 
 「主」なる神の呼称は変わったものの
 その神性は変わっていない。
 
 「エンキ神」の時代はシュメール、
 「エア神」名の時代はシュメールに次ぐ
 アッカド〔サルゴン大王の王朝〕で、
 イブル語が属するセム語が
 広く使い始められた。
 
 そして『旧約聖書』では「エア」を踏襲した
 YHVH(yeya)が継続され、
 やたらに呼んではならない聖名として
 その品位を保っている。
  
M.K記

 連絡先:090-2485-7908


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