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第三章 「創世記」カインの本実 [創世紀(牛角と祝祭・その民族系譜)]

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 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
 執筆時期:1999~2000年

《第三章 「創世記」カインの本実
 
 「創世記」第四章は
 アダムとイブの子カインについていう。
 
 「アベルは羊を飼う者となり、 
  カインは土を耕す者となった。
  日がたって、
  カインは地の産物を持ってきて、
  主に供え物をした。
 
  アベルもまた、
  その群れの初ごと肥えたものと持ってきた。
 
  主はアベルとその供え物とを
  顧みられなかったので、
  カインは弟アベルに
  「さあ野原へ行こう」といって誘い、
  その野原で弟を殺してしまう。」
 
  それを知って主がカインに対していこう。
 
  「あなたは何をしたのです。
   あなたの弟の血の声が
   土の中からわたしに叫んでいます。
   今あなたはのろわれて
   この土地を離れなければなりません。
   (中略)あなたが土地を耕しても、
   土地は、
   もはやあなたのために実を結びません。
   あなたは地上の放浪者となるでしょう。」
 
  カインは主に答える。
 
  「あなたは、きょう、
   わたしを地のおもてから追放されました。
   わたしはあなたを離れて、
     地上の放浪者とならねばなりません。」
  「そして、主はカインを見付ける者が、
   だれも彼を打ち殺すことのないように、
   彼に一つのしるしをつけられた」と結ぶ。
 
 この挿話の語っている内容は
 明らかに土地(野原・畑)を離れた
 労働者(カイン)の誕生譚である。
 
 「土を耕す者」、
 サンスクリット語でいう 
 karasu (農夫)が
 「羊を飼う者」アベルを殺してしまい、
 土地がアベルの血を吸ったことにより
 
 「土地を耕しても、
  土地はもはやあなたの実を結ばなくなり、」
 
 「土地を離れなければならなくなる。」
 
 「地のおもてから追放されて」
 「地上の放浪者」となったのである。
 
 カインは
 「エデンの東、ノドの地に住み」、
 妻を得て子孫を得る。
 
 その六代の後に
 「家畜を飼う者の先祖」
 ヤバルと
 
 「青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者」
 トバルカインが誕れる。
 
 もはや多くを付け加える必要はないであろう。
 
 カインは「労働者」となったのである。
 
 ヘブライ語の「カイン」は鍛冶屋である。
 
 「創世記」第九章には洪水神話後の挿話で
 ノアの第二子ハムの子として
 カインの名に近似した
 カナンの名を持った者を登場させる。
 
 父ハムが、
 その父ノアがぶどう酒を飲んで酔い、
 天幕の中で裸になっているところを
 見てしまったために
 ノアはその孫に当たるカナンに対していう。
 
 「カナンはのろわれよ。
  彼はしもべとなって
  その兄弟たちに仕える。」
 
 またいった
 
 「セムの神、主はむべきかな、
  カナンはそのしもべとなれ。
  神はャパテを大いならしめ、
  セムの天幕に彼を住まわせられるように。
  カナンはしもべとなれ。」
 
 カナンは、
 しもべ(召使)である労働者となることを
 役目づけられたのである。
 
 カナン Canaan は地方名として知られる。
 
 その地域範囲については諸説あるが、
 北はシリアのオロンテス川河口地帯から
 地中海東岸を南下して
 パレスチナ地方までとみられる。
 
 ウガリットは
 その北部の文化的経済的中心であった。
 
 ここはユダヤ人の地ではなく、
 カナン人の代表ともいうべき
 ウガリット人の祖地で商人的性格が強い。
 
 この第九章にいうカナンは
 商人であるウガリット人の名代と
 考えてよいであろう。
 
 セム語の支派とされるウガリット語に 
 mark という用語がある。
 
 「記号、しるし」を表し、
 英語にも同義で移入されている。
 
 『創世期』第四章の
 
 「主はカインを見付ける者が
  だれも彼を打ち殺すことのないように
  彼に一つの”しるし”をつけられた」
 
 という「しるし TAYVN 」で、
 英語版の聖書は
 全てこの語を mark と記している。
 
  Mark は「しるし」とともに商人を意味する。
 
 ウガリット語を祖語として成立した
 フェニキア語時代、
 フェニキア人は
 スペインの南端に近い現在も同名であるが、
 植民都市 Maruga を開くが、
 その意味は商館を意味する。
 
 同語はポルトガル語に反映し、
 ポルトガル人が十五世紀以後
 大航海時代に世界を航海したが、
 現在のマレーシアの
 マレー半島の西岸にある町
 Melaka は彼等の商館都市で、
 その名はカナン語に祖語があるのである。
 
 また、
 英語の
 商人は marchant 
 市場を market 
 
 ドイツ語における広場または市場を 
 Marche というのも同類語である。
 
 フランス語の 
 marche も「市場、取引、売買」 を
 さらに「行列、歩くこと、進行」を意味する。
 
 マルタ語においての「記号、しるし」を
 表す用語
 singal について先に触れたが、
 この語から派生した用語 
 sengha は「商業、技術」を意味する。
 
 また同じく「記号、しるし」を
 意味する用語として 
 tebgha があり、
 同根語 thigh ha は
 「売る」で商人と関係していることを示す。
 
 tbahar は「航海する、出帆する」意味となる。
 
 この tebgha は、シュメル語ではないが
 シュメルの楔形文字に表記された 
 thveli と対応する用語であろう。
 
 thveli は金属工と理解されているが、
 
 『創世期』第四章に
 「青銅や鉄の全ての刃物を鍛える者」の
 名として挙がるトバルカイン 
 Tubelcain の構成語で、
 この名は「金属工匠」と理解できる。
 
 旧約聖書における
 ヘブライ語の「しるし」は 
 TSYVN(tsion) であるが、
 商品と解釈できる
 「供給品、必需品、設備」を表す用語が 
 TSYVO(tsiod) で、
 TSYVN の語尾NがOに代わっただけである。
 
 そのd(ד)  r(ך) に極似しており、
 『旧約聖書』のシオン 
 TSYVN(しるし) にする挿話は
 スバル人の商業活動の盛大さから
 創造されたものと考えて
 差し支えないと思う。
 
 スバル人とは
 北メソポタミアのカルト人のうち、
 金・銀・銅・錫・鉛を
 取り扱うことを中心に
 織物・木材・貴石をも交易する
 商人たちであったのであり、
 青銅器時代を迎え、
 その需要が増大した
 紀元前三千五百年頃から
 彼等の活動が活発化したものと推察できる。
 
M.K記



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