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第二章 牛頭崇拝とハフリ [創世紀(牛角と祝祭・その民族系譜)]

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 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
 執筆時期:1999~2000年

《第二章 牛頭崇拝とハフリ


     シュメル語に

 「アブレ ab-re」という言葉がある。

 

 直訳した意味は「踏みつける牛」である。

 

 飯島紀の

 『シュメール人の言語・文化・生活』に

 紹介されている。

 

 ルーブル博物館所蔵のグデア像Bに刻まれた

 楔形文字碑文の一説である。

 

 グデアは王名で、

 紀元前二千年百年頃ラガシュ市を治めていた。

 

 ラガシュ市は、

 その当時のペルシャ湾の西北海岸沿いにあり、

 シュメル人によって設立された都市と

 みられている。

 

 「ab-re」の一節は神殿建設に関する

 グデア王の業績について

 述べられている一段に記されたもので、

 「ab」は牛を表し、

 せまい意味では雌牛となり、

 「e」は「踏みつける」の意味で、

 文法的には「踏みつける牛」となる。

 

 「牛を踏みつける」行為は、

 ここまで紹介した緒資料に登場した

 牛を屠殺する者の重要な行動要素である。

 

 よって、

 「ab-re」は「犠牲に供される牛」

 と解釈されるだろう。

 

 ここで留意したいのは、

 この表現が

 慣用句化される固有名詞となっていると

 思われることである。

 

 紀元前二千百年頃に神殿において

 牛を供犠する祝祭が行われていたことを

 記録する一条であり、

 

 その牛を指して

 「アブリ」と称していた事実である。

 

 ハラフ期のアルパチヤ遺跡の時代からは

 約四千年の隔たりがあるが、

 慣用句化されている様子からすると、

 その語の起源はかなり遡るだろう。

 

 「ファファリ phahare 」と

 読める楔形文字がある。

 

 司祭あるいは聖職者を表す用語である。

 

 楔形文字「ファ」だけでは

 枝・翼を意味するが、

 また、

 「シャ」とも読まれるので「ファファリ」は

 「シャブラ Śabra」とも表記され、

 同じく司祭・聖職者の意味である。

 

 シュメル語で表現された

 「ファファリ」を構成する

 楔形文字と意義との間に

 相関関係を理屈づけるのは難しいので、

 この用語は移入されたものと思われる。

 

 そこで語源として想起する用語は

 「ハフリ habre 」である。

 

 ハフリは明らかに

 司祭、祝祭の主催者の役目を持っている。

 

 ハフリは「ファファリ」と

 同根語であると考えられるのである。

 

  Abre と  habre とも

 当然関連があると判断でいるが、

 シュメル語の楔形文字の上で

 関係づけるのは難しい。

 

 しかし、

 ハフリが牛の屠殺に担わる者であっても、

 牛に対する崇拝者であったと判断できる。

 

 そして、

 牛信仰の故郷が北メソポタミアであることは

 牛頭を掲げた住居跡が多く出土するなどの

 事情から明らかである。

 

 北メソポタミアにおける

 「ハフリ」に関係する地名を

 現在の地名などがから拾ってみる。

 

 まず第一に

 これまで何回か取り上げた

 トルコからシリアの東端を流れる

 ハブール( Khabūr )川、

 チグリス川がトルコの西方から来て

 イラクへ入る直前に

 東方からの流れを吸収して南流を始めるが、

 その合流点にある町が

 ハブル( Habur )、

 それより西方 Midiya との間に

 イディル Idil とともにあるのが

 ハベルリ Haberli で

 アッシリア時代の碑文で

 確認されている町である。

 

 また、

 チグリス川がイラクへ流れ入る地点で

 東方より合流するトルコに水源を持ち

 イラクの北端を流れる川が

 ハブール( Khabūr )川の町である。

 

 さらに、これまで注目を繰り返してきた

 大ザブ川は「ハブールの大ザブ川」と

 イラクでは呼ばれている。

 

 トルコ領を流れる大ザブ川沿いに

 ハッカリ(Hakkari)の町がある。

 

 これは「ハフリ」の

 トルコ語転訛と考えられる地名である。

 

 その東南方にシャムダールの山峡がる。

 

 その大ザブ川がイラクに入り

 北方から西方へ流れを変えるあたりから

 下流一帯をハブリウリ(Habūri-uri)と

 アッシリア時代には呼んだ。

 

 そこからかなり南方の地域になるが、

 バクダッドの東方イラン領に

 ハボール(Habor)山脈がる。

 

 ハボールから東方のザグロス山脈を越えた

 テヘランの南方に広がる砂漠が

 カビール(Kavir)砂漠と呼ばれる。

 

 因みにシリアのハブール川に

 ハッサカ付近で

 西方のトルコから流れきて合流する川を

 シャブール(Shabūr)川という。

 

 以上の紹介で解るように

 ハフリの地名のある地域は

 新石器時代に大量の野牛が

 狩猟された地域である。

 

 特に集中している地点が、

 北イラクのシンジャール山脈の北方、

 トルコとの国境に広がる

 山岳地帯と草原地帯との

 分れ目一帯であることが

 改めて確認できた。

 

 一般に

 この草原地帯をハブール高原と呼んでいる。

 

 ここに列挙して地名の中に

 

  Khabūr あるいは Kavir 

 と表記される所もあるが、

 これは飯島紀の「前掲書」によると

 奉献をを意味する熟語として

 gaba-ri-a という語があるので、

 この語との関連があるかもしれない。

 

 どちらにしても神への奉献は供犠であり、

 本来的に同類語と考えられる。

 

 グデア像

クリックすると新しいウィンドウで開きます

 

 

 ※参考

 ⦅ハラフ期の土器について⦆   


 

 ⦅ハブール川⦆


 

 ハブール川

 (ハブル川、カブル川、Khabur、Habor、

            Habur、Chabur、

  アラム語:ܚܒܘܪ, 

  クルド語:Çemê Xabûr, 

  アラビア語:نهر الخابور Bahr al-Chabur

 

 ⦅ARPACHIYAH 1976⦆






M.K記


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