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第一章 ホーリー祭 [創世紀(牛角と祝祭・その民族系譜)]



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 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
 執筆時期:1999~2000年

《第一章 ホーリー祭

 ドゥルガー・プージャーが
 デーヴィー女神を賛美する
 豊穣祭であることが明らかになった。
 
 この祭礼は毎年九月下旬秋分の日
 (太陽暦九月二十三日頃)を
 はさんで行われる。
 
 また、
 この祭礼が大麦と関係が深いとみえてきた。
 
 実は、
 祭礼の終わった後、
 西インドでは
 大麦、小麦などの麦の耕作期を迎える。
 
 十月から十一月が播種期で
 翌年の三月・四月に収穫期がやってくる。
 
 その三月、
 春分の日(太陽暦三月二十一日頃)を
 はさんで行われるのが
 ホーリー Holi 祭である。
 
 インドのヒンドゥー暦(インド国定暦)での
 十二月大晦日と新年の一月一日が
 やってきて正月となる。
 
 インドのヒンドゥー暦の最終月は
 バーグン月というが、
 その満月の夜、つまり大晦日の夜に
 街や村の路地に枯木、古布、古い家具を
 積み上げ、
 魔女ホーリーになぞらえて
 火を燃え上がらせる。
 
 魔女ホーリーの名に依って
 ホーリー祭と呼ばれる。
 
 しかし、この魔女ホーリーの実像は
 いろいろの説があって実のところ解っていない。
 
 地方ごとに解釈が異なり、
 ドゥルガー女神のように
 地方によって名前が変わっても
 明らかに同女神であることが解るような
 共通性がみえていない。
 
 最もよく知られる伝承は、
 ある魔王が
 信心深い自分の息子をうとましく思い、
 自分の妹であり不死身だと知られた
 ホーリー(ホーリカー)が
 その息子を抱いている時
 火をかけ焼き殺させようとしたが、
 反対に妹が死んでしまい、
 息子は信心深さ故に
 助かったという神話である。
 悪いものを焼き滅し、
 信心深い者あるいは善いものの
 残り盛んになることを
 祈願する祭であると解釈されている。
 
 翌日が正月で、
 新しい月名は
 チャイトラ Caitra といい、
 月替わりのことを
 チャイトラ・サンクランティ 
 Caitra-Samkranti という。
 
 「チャイトラ月への移転」という味である。
 チャイトラは火神アグニと関係するので、
 この祭礼で魔女を殺すことと係りがある。
 
 さて、
 ホーリーはカナアン神話と
 関連がありそうである。
 
 カナアンとは、
 シリアの古代名で
 旧約聖書にいわれる地名である。
 
 ラス・シャムラで
 発掘された粘土板の神話のなかで
 冥界の神そして語られる
 ホロン Holon と関係すると思うのである。
 
 ラス・シャムラは、
 古代名ウガリットで、
 シュメール(シュメル)の時代から
 フルリ人の影響を受けたとみられる。
 
 特に彼等が支配者階層を占めたとみられる
 ミタンニ時代には商業市として
 経済を支えた地中海沿岸の港湾都市である。
 
 ジョン・グレイ『オリエント神話』によると、
 その粘土板には太陽の女神が
 大地から暗闇を取り去るように
 懇願されることによる詩句から始まる。
 
 次の詩句が出てくる。
 
 「大地の毒の力を
  有害な噛みつく獣の口から
  破壊的な大食漢の口から
  (暗闇を取り去って下さい)」
 
 さらに
 
 「我々が見出すところから判断して、
  そこには日照りへの言及があり、
  それは暗闇と一対になって
  太陽がぼんやりとかすんでしまうほど
  ひどい埃をもたらすシロッコ、
  すなわち砂漠の熱風を示している。
 
  我々はこの神話が植物を枯らしてしまう
  長期にわたるシロッコに対する
  特別の呪文としての
  蛇の「乳しぼり」との関連で
  用いられたと言いたい」
 
 と述べている。
 
 大地の毒の力とは砂漠の熱風
 すなわち
 旱魃を起こす自然の脅威を
 いっているのである。
 
 冥界の神ホロンは
 次に蛇の姿をした
 太陽女神の娘である女神に花嫁料、
 もしくは
 好意に対する報酬と思われるものを
 支配の約束をする。
 
 数段の物語の後、
 精力に満ちたホロンが
 女神のところへやってくるが、
 女神は家に鍵をかけて開けてくれない。
 
 彼女は彼に対し、呪文で家に鍵をかけ、
 彼女は彼に対し、家を閉じ、
 彼女は彼に対し、ブロンズ(のかんぬき)で
 鍵をかけた。
 
 ホロンはしきりに嘆願する。
 家を開けて下さい。
 宮殿を(を開け)、私を休ませて下さい。
 
 この後、女神はさらに要求する。
 蛇を幾匹か持って来て下さい。
 
 私の花嫁料として、
 爬虫類を持って来て下さい。
 
 私の愛の報酬として、蛇の血を……。
 
 ホロンはこれについても承諾する。
 
 グレイこれらの詩句を
 
 「長期にわたって吹き荒れる
  シロッコに対する呪文とみなしている。」
 
 と見解を付している。
 
 この後どうなったか解らない。
 
 粘土板が欠落しているからである。
 
 しかし、
 続く詩句の中でこの女神が
 家ごと鍵を掛けられて
 焼き殺されたと推測する。
 
 カナアンのホロンは冥界の男神である。
 ホーリーは魔女である。
 全くの異なりをみせている。
 
 プロトタイプのホロン神話があり、
 カナアンでは冥界の神に
 ホロンの名が与えられたが、
 インドに流入した神話では
 太陽女神の娘神が
 ホーリーとされたのであろう。
 
 枯木やボロ布を集めて
 魔女ホーリーに見立てて燃やすというのは
 カナアン神話でいう
 太陽女神の娘神に擬装しているのである。
 
 大野晋著『日本語以前』によると
 スリランカのジャフナ付近では
 祭りの日
 円屋根がつき木材で建詰めされた
 牛小屋を焼いてしまうという。
 
 ウガリットは後に地中海沿岸に建国された
 フェニキアに吸収されたが、
 ウガリット語を基礎にしたフェニキア文字は
 ギリシャに取り入れられ、
 
 現在我々が日常的に使っている
 アルファベットを誕み出した。
 
 このアルファベットの
 アルファはセム語の牡牛を意味する
 alp が
 ギリシャ語に取り入れられたものである。
 
 ギリシャ語の 
 αλψιτ は碾割(ひきわり)大麦を表し、
 碾臼で大麦をあらびきするのに
 牛が活躍した名跡と考えられる。
 
 さて、カナアンの冥界の神ホロンは
 ギリシャ語で 
 κορνη となり、
 棒、棍棒、杖の意味である。
 
 つまり、
 これは穀物を脱穀するのに使われ
 杵をもいうのであろう。
 
 インドの 
 Holi のサンスクリット類似語は
 khali で杵をいう。
 khali-stoka で杵臼を表す用例がある。
 khala は打穀場を時には穀物そのものを表す。
 
 その上興味ひくことに 
 khalā は悪婦をいう。
 
 ヨーロッパの言語に拾ってみると、
 ドイツ語では prügel で棍棒、むち打ちを
 英語では pole で棒、柱、竿の意である。
 
 さらに同意語を
 サンスクリット語に捜ってみると
 danda があり棒、杖、竿、木を表す。
 danda はインド神話の地界の、
 つまりホロンと同じように冥界の神
 ヤマ Yama 神の武器である。
 
 このようにみてくると
 ホーリー祭の実像がみえてくる。
 
 暑さを増しつつある三月のこの時季、
 旱魃をもたらす砂漠の熱風の代名である
 毒婦を火神アグニの神徳で追放し、
 収穫が近づいた大麦などの
 麦類の豊饒を願って、
 採入脱穀の象徴である杵を神格化して崇め、
 火神アグニに
 使い古しの杵や竿を火に投じて
 ささげたのである。
 
 アグニ神には人々に災苦をもたらす
 魔界の力を圧えつける力があるのである。
 
 悪魔を容赦なく絶滅させた物語は
 インドで最古の聖典
 『リグ・ヴェータ』から語られている。
 
 巷間に人気高い物語は
 『ラーマーヤナ』に
 ラーマ王子の宿敵として登場する
 暴虐の魔王ラーヴァナも
 アグニ神にはかなわない。
 
 コントロールされるのである。
 
 ホーリー祭の翌日はお正月である。
 
 新年を迎えたことを祝って人々は、
 午前中は色粉や色水を互いにかけあう。
 
 いわゆる水かけ祭である。
 
 午後になると着飾って
 親戚や教師、職場の上司など
 常日頃お世話になる人々に
 新年の挨拶をするため出かける。
M.K記

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