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第一章 デーヴィー・マハートミヤ [創世紀(牛角と祝祭・その民族系譜)]

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 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
 執筆時期:1999~2000年

《第一章 デーヴィー・マハートミヤ》
 ここに造形されたモティーフは
 ドゥルガーの英雄譚
 「デーヴィー・マハートミヤ 
  Devi-mahatmya 」に依拠している。
 
 デーヴィーは前に述べたように
 ドゥルガーの本称、
 マハートミヤは大勝利、大業の意で
 「デーヴィーの大威徳伝」
 というのが名称である。
 
 シヴァ神の女性的力( śakti )の
 象徴であるデーヴィーには二面がある。
 
 猛々しい一面とやさしい一面である。
 
 前者の代表はウマーで
 ヒマラヤ山の生まれで黄金の神である。
 
 ドゥルガーは後者の猛々しい姿を表す。
 
 この神名は本来
 水牛の悪魔の名前であって、
 彼女が、このドゥルガーと呼ばれた
 マヒシャースラを殺したことにより
 その名を与えられたのである。
 
 英雄譚には悪魔との戦いの原因、経緯、
 最後に悪魔を死に至らしめた
 戦いの情景が描かれている。
 
 ヴェロニカ・イオンズの
 「インドの神話」に
 その戦いの有様を紹介してもらう。
 
 この神話は、
 悪魔ドゥルガーが三界を征服し、
 神々を天国から追い出し森へ入って
 暮すよう強制したことに始まる。
 
 神々はシヴァ神に助けを求めたが、
 彼は妻であるデーヴィーに
 相談してほしいといい、
 デーヴィーは助力を承諾した。
 
 神妃デーヴィーは
 特別に創りだした闇夜を送ったが、
 悪魔たちには勝てなかった。
 
 そこでデーヴィーは
 自ら戦いに加わることを決意し、
 カイラーサ山を出発した。
 
 戦いに臨む彼女は
 猛々しく威嚇的な表情になり、
 十本の腕を持ち、虎に乗っている。
 
 神々は悪魔退治に向かう彼女に
 それぞれに象徴される武器を
 十本の腕に携えるよう与えた。
  
 ヴィシュヌ神の円盤、
 水の神ヴァルナの巻貝、
 火の神アグニの燃える投槍、
 風の神ヴァーユの弓、
 太陽神スーリヤの箙と矢、
 地界の神ヤマの鉄棒、
 インドラ神の稲妻、
 財宝神のクベーラの棒、
 龍神シェシェの蛇の花輪、
 山岳神ヒマラヤの攻撃用の虎
 
 がデーヴィーの武器となったのである。
 
 デーヴィーがマヒシャの領土に近づくと、
 悪魔は彼女を捕らえようとした。
 
  マヒシャの軍勢、
  一億台の戦車、
  一千二百億の像、
  一千万頭の馬と
  無数の兵が待ち構えていた。
 
 デーヴィーも援軍として
 さまざまな被造物を集め整えた。
 
 戦いが始まる。
 
 デーヴィーは
 矢の嵐と木と岩の洪水に攻撃された。
 
 しかし、
 一千本の腕を生やしたデーヴィーは
 ドゥルガーに武器を投げつけた。
 
 武器は彼の軍勢の多くを死滅させた。
 
 ドゥルガーは二本の燃える投槍で
 これにこたえたが、
 デーヴィーは一千本の腕でこれをかわした。
 
 別の一本の矢、一本の棒、一本の大釘も
 女神によってかわされた。
 
 そして、
 女神は悪魔を捕らえ、その上に足をにせた。
 
 彼はもがいて逃れ、戦いは再開した。
 
 今やデーヴィーは
 おのれ自身の身体から
 九百万の被造物を創出し、
 
 これらが悪魔の全軍を打ち滅ぼした。
 
 彼女はまた武器サショヌを持ち出した。
 
 これはドゥルガーの作り出した
 霰(あられ)を伴った嵐から彼女を守った。
 
 それから、
 悪魔は彼女めがけて山を投げた。
 
 彼女はそれを七つに切断し、
 矢を打ち込み、無害なものにした。
 
 今や、
 ドゥルガーは山のように
 大きい象に化けたが、
 デーヴィーの偃月刀のような
 瓜によって切られ、断片となった。
 
 すると彼は、巨大な水牛となり、
 その鼻息によって木々をちぎり、
 これを石や山と一緒に
 女神めがけて投げつけた。
 
 しかし、
 デーヴィーは三叉槍で彼を突き刺し、
 その正常な姿
 ―千本の腕をもち、
 その―本―本に武器を携えている悪魔
 を取り戻すよう強制した。
 
 女神はその千本の手で彼の腕をつかみ、
 引きずりおろした。
 
 それから、
 彼女は―本の矢で彼の胸を貫いた。
 
 彼は死んだ。
 
 血がその口から流れ出た。
 
 勝利のあと、
 デーヴィーは自分の名をドゥルガーとした。
 
 こうして
 デーヴィーとマヒシャとの戦いは収束したが、
 水牛ないし牡牛を殺戮する場面が、
 エローラ石窟第一四号窟に
 浮彫された情景なのである。
 
 デーヴィー・マハートミヤには、
 デーヴィーの英雄譚として
 さらに別の物語を載せている。
 
 一万一千年に及ぶ苦行の功徳によって
 シヴァ神からいかなる神の攻撃を
 受けないと保証を得ていた
 スンバとニスンバという
 兄弟の悪魔との戦いの物語である。
 
 さまざまな軍勢との戦い後、
 デーヴィーは
 スンバとニスンバと一騎打ちで戦い、
 双方を殺し勝利を収める。
 
 このようにして、
 デーヴィーは神々を代表し悪魔と戦い、
 勝利を得て戦いの女神として
 象徴化されたのである。
 
 だが、
 戦いの相手となったドゥルガーは
 単に水牛の化物で
 悪事を働いたからというだけなのだろうか。
 
 そうではない。
 ドゥルガーは、
 自然の脅威、旱魃を象徴しているのである。
 
 ドゥルガー女神の神名が 
 durga 、
 つまり困難を冠したものであることを述べた。
 
 この語には困難のほか、
 近づき難きもの、近づき難き処、
 険阻な処の意味がある。
 
 しかし、
 これでは抽象的すぎる。
 
 そこで同語義で語音の近い用語を
 インド・ヨーロッパ語に捜ってみると、
 
 英語に drought が出てくる。
 
 dry に由来した旱魃を意味する用語である。 
 
 ドイツ語の同義語は dürre 、
 ギリシャ語では 
 δηλησνζ 破壊 
 δηλητηρ 破壊者と変化する。
 
 デーヴィーの戦いの端緒は
 「ドゥルガーが、神々を天国から追い出し、
  森へ入って暮すよう強制したこと」
 であった。
 
 多分人々は旱魃のために
 耕地が破壊や疲弊し、
 作物の収穫が上がらず、
 止むを得ず森林の産物、
 バナナなどの果物や果実に頼って
 生活しなければならなくなった経験があり、
 古代のインドの人々にとって
 旱魃といかに対処するかが
 重大な仕事であったかを
 教えてくれる神話なのである。
 
 旱魃がいかに過酷で過重な苦闘が
 繰り返されたかを物語りにしたのが、
 デーヴィーの水牛あるいは牡牛の魔物
 マヒシャまたの名ドゥルガーとの
 戦いなのであった。
 
 そして、
 悪魔との戦いに勝利する。
 
 つまり自然の脅威や災害に打ち勝って後
 もたらされるのは豊饒の喜びである。
 
 ドゥルガー女神はまた豊穣の女神、
 安穏を与えてくれる女神なのである。
 食料を豊富に確保し食膳の喜びを
 与えてくれる女神なのである。
M.K記
 連絡先:090-2485-7908
 

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